港の見える丘で 霧笛が溶けてゆく 白く濁った空気が 誰かの夢を運んで 世界中の言葉たち 波に乗って漂う 私の知らない物語 そっと届けながら 山下公園の並木が 密やかに囁いて 渡り鳥の羽音を まだ覚えているの 私の記憶の中も 渡りの途中なのね 大さん橋の先で 船の明かりが揺れる 海の底で眠った 異国の時計の針が 今も時を刻んで 錆びた音を鳴らしてる 聞こえない音色にも 耳を澄ましてみる この街の信号機は 三つの色を混ぜては 誰も知らない色に 変わってゆくけれど それは私の心も 同じ色をしてる 港町の十字路 霧が晴れる前に 新しい風が吹いて 私を染めてゆく
