大山阿夫利神社 石段の間を縫って 朽ちた提灯の列が 夜道を紡いでる 誰かの祈りの声が 古い糸巻きの中で まだ解けない結び目を そっと守っている 伊勢原運動公園 誰もいないグラウンドで ほどけた靴紐のように 夜が伸びてゆく 私の心の中も もつれた糸のよう 成瀬の土手に立てば 夜の裁縫箱の中 千切れた想いの断片 縫い合わせてみる それでも合わない部分は しるしをつけたまま 明日という布地の上に 置いておくことにした 提灯の光さえ 糸のように細くて 手繰り寄せようとすれば すぐにほどけてく でもそれは私の 夜になじんでいく まだ見ぬ明日の布を 誰かが織っている その音が聞こえる夜は 眠れないままで
