多摩川の対岸で 眠れない機械が鳴る 工場地帯の奥から 金属の子守唄が 今宵も静かに響いて 誰かの夢を紡ぐよう 白い蒸気の合間を そっと通り抜ける 川崎大師の鐘が 夜の空を割るたび 錆びついた記憶たちが 目を覚ましてゆく 私の心の中も 少しずつ溶けてく 稲毛公園の奥で 古いタンクが眠る 誰も知らない物語 その中に閉じ込めて 丸い影を落としては 月を招き入れている きっと私のことさえ 映してくれるかな 赤い警告灯たち リズムを刻みながら 明日への合図をする まるで約束のよう でもそれは暗号めいて 解読できないまま 鉄の街が奏でる 静かなシンフォニー 私も音色の一つに 溶けてゆきたいな
