辰口温泉 夜霧の中 窯焚きの炎 揺らめいて 九谷の絵付け 色を放つ 釉薬の闇を 照らすよう 陶器の街を めぐる風が 記憶の埃 掃いてゆき 失くした色を 探すように 月が照らして くれるから 那谷寺から 鐘の音が 夜道を渡り 響いて 誰も歩かぬ 石段には 木漏れ月だけ 降り積む 根上りの松 枝の下に 時をかくした かたちして 先人たちの 技の跡を 影のように 宿すよう 古い窯場の 赤レンガが 炎を抱いて 眠ってる 何代目かの 職人たち 夢を焼いては 明けてく 根上学園 並木道に 散りばめられた タイルが 星座のように 輝いては 夜道を照らす ランプに 染付の器に こぼれ落ちた 今宵の月を すくい上げ 誰かの想い 注ぎ込んだ 青の世界が 広がって 陶土を練る 音がする 誰もいない 夜の窯 明日も誰かの 手の中で 新しい色 生まれてく
