犀川の流れ 稲穂の波が 月に濡れては 光を放つ 本田の森から こぼれ落ちてく 蛙の声が 渡り鳥を呼ぶ 時計の針より ゆっくりとした 季節の色が にじみ出して 誰かの足音 追いかけながら 記憶を紡ぐ 散歩道 横屋の古道 石畳の上 夜露が描く 水彩画 誰が描いたの この風景は 消えない様に 祈ってる 別府の宿場 古い民家が 瓦の隙間で 囁いてる 明かり漏れ出す 障子の向こう 百年前の 影芝居 穂積神社の 石段数え 夜の帳まで 昇ってく 誰のために 鳴らす鐘の音 こだまの数を 数えてる 二つの川が 抱く街には 時が織りなす 絹織物 水面(みなも)に映る 今宵の月は 織り目を解く 糸くずれ 瑞穂の里の 土の匂いが 夜風に乗って めぐり来る 畦道伝い 歩く影だけが 道しるべの 目印に 稲穂の波が 奏でる音を 誰も聴かない シンフォニー ただこの場所で 静かに響く 夜が作曲(つく)った メロディ