懐古園の中 誰も座らない椅子が 百年分の重さを 支えているの 木々の隙間から 漏れてくる月明かり 座り心地を今も 確かめている 小諸城址に立つ 石垣の隙間から 生えている草たちが 椅子に触れては 私の孤独さえ 慰めているよう 布引の滝では 水しぶきが椅子を 洗い清めるように 降りかかってる 誰かの想い出が 水に溶けて消えても 椅子は静かに待つ 新しい誰かを 座り慣れた椅子に もう座れないのは きっと昨日の私 明日の私も 違う場所の椅子を 探しているから 夜露を集めた 古びた木の椅子が また誰かの物語 聞き始める