たった一つの枷に繋がれて犬は何を 吠えるだろう たった一つの牙を剥き出して犬は 何を吠えるだろう この耳を塞ぐことなどなしに 初めから在りもしないかのように 貶めたやり方ではあるが 見向きもせずに行くべきだろうか 忘れられてしまう存在だったって 妨げる障害だったって 日を生き 傷みを知ってきたようだった 知れた言い訳が並んで 間抜けな吠え面をかまして それでも犬はずっと喚き散らした たった一つの枷に絆されて犬は何を 思うだろう たった一つの牙を剥き出して 犬に何ができるだろう たった一つの傷を舐めながら犬は 何を吠えるだろう たった一つの牙を剥き出して犬は 何を吠えるだろう なあ 犬か人か それはどんな風に役割られてみても 決して互いを 忌まないでなんていられはしない 凍てる地に散って冷めた心を掻き 集めながら 無に帰す努力を見てどんな 風に思うのだろう 差し伸べる手は嫌みに変わる 進む脚に迷いなど要らない ただ信じる道を行くだけで 何故こんなにも傷むのだろうか 忘れられてしまう存在だったって 妨げる生涯だったって 光を浴びる日をずっと待っていた 負け犬の遠吠えだったって 犬死にの運命だったって 楽しみに明日をまた待てるように 微かにも見えないような光だって 決して取れはしない枷だって 目を凝らし身をずっと捩って 哭いている 憐れみがもし勝ったって 売り捨てるような糧だって 金なくばやらぬが情けなんだと せめて餌もやらず宿灯りを目指して 行く 目もやらず先を見つめ 去ってゆくんだ