水深 200m はいよいよ深海の入口になります。 ここから深度 1000mまでは、 深海の中では浅いゾーンで、 中深層、「Twilight Zone」 と呼ばれています。 時間帯によって見られる 生物に変化があるのが特徴で、 この中深層には世界中の漁獲量を 上回る魚が生息しており、 持続可能な漁業の研究も 進んでいます。 また、同じ中深層でも、 深度によって環境は変化するため、 異なる環境に適応した特殊な見た 目の生物もいます。 例えば、「海の天使」と呼ばれる 「クリオネ」は、 体のほとんどがタンパク 質でできているため、 透き通った見た目をしています。 世界最⻑の魚である 「リュウグウノツカイ」は、 10m を超えることもあり、 銀白色の体を鮮やかな赤いひれが 彩ります。 この赤色には秘密があり、 水深10mを超えると、 赤色の光は水に吸収され、 暗い色に変化します。 そのため中深層の赤は、 見えにくい色となっているので、 捕食者に発見されない最適な 色になっています。 この層に生きる生物群は表層から 落下する エネルギーに依存しています。 それはマリンスノーと呼ばれ、 表層から継続的に沈降する有機 デトリタスであり、 海中を沈んでいく様子が 雪のように 見えることからその 名がつきました。 マリンスノーは、 光が豊富な有光層から 下層の無光層へとエネルギーを 輸出する重要な 手段であるだけでなく、 沈む過程でCO2を深 海に送り込むため、 結果的に地球温暖化物質を 深海に封印する役割を 担っています。 マリンスノーとして 深海に輸送された物質は、 熱塩循環の速度が秒速 1 メートルなため、 数千年もの間、大気に接触せず、 確実に深海の中で 幽閉されることでしょう。 すなわち、 みなさんが見ているマリンスノーと 呼ばれるものは、 雪のような明るい場所で 生まれ変わりを繰り返す、 ものとは違い、 微かなまま死んでいった生命の、 宛先のない、 遺書なのかもしれません。 物質は生命のスケールを超えて 循環していき、 マリンスノーに封印されても、 いずれは地上に戻ります。 その時の光は、 匂いは、 温度は、 どのように 感じられるのでしょうか。 以上が、 中深層についての説明でした。 次は1000m - 4000m 漸深層になります。 これより先は完全な 暗黑の世界になりますので、 絶対に、 はぐれないようにしてくださいね。