遅い日が積もるほどに すり減る記憶が 風に揺れて光る 手を振るは沈丁花 春めく窓辺に 影はまだ冷たい 永遠さえも 手の中にあった あの日の僕は今六畳一間 嘘つきな季節に 涙が出ないように ただ目を閉じていたいだけ なのに あの花が散るとき その様はきっと綺麗だ 綺麗だ いずれは覚める夢に この身を焦がして 痛む胸を撫でる 朧な月に吠えて しゃがれ声で泣く 朝よ来るなと泣く 儚く消える ことも知らなかった 終わらない光を望んで融けた 不確かな言葉に 涙が出ないように この手で塞いでいたいだけ なのに 吹き抜ける風に 舞う花を僕は見ていた 見ていた 終わる時を知るなら 明け渡せないもの それを心と呼ぼう 終わることなどないと 嘯く弱さも 僕の心の一つ 嘘つきな僕らに それでも美しい 季節がまた過ぎ去るだけ なのに この花が散るとき その様はきっと綺麗だ 綺麗だ 花よ散らないで 儚さなんていらない いらない 盛りこそ惹かれ 花嵐光れ