温い速度で溶けてゆく暮らしを 俯瞰で見ている私の影がいる 綻ぶ靴を結ばずにいるのは 結んでもすぐに解けてしまうから 書きかけの紙切れに 遺恨はないだろうか 花が散るように思いは 褪せてゆくこと 季節が巡るように思い出は 消えないこと いつも通り朝食を 作りすぎてしまうこと 終わりに触れた日から何も 手につかないこと 空の蒼さは惑星の底の底 葉末に縋る水玉は煌めく 葬式をしよう 旅に出よう 噓をつこう 翼がなくても 止り木がなくても 夢でもいいから完璧な弱さが欲しい 大人ぶるだけでは何も 変えられないのに その頬に触れる手は心做しか 震えている 終わりの日の悪魔は口を広げて 待っている 人であるとは愛の奴隷ということ うらぶれた夜のメランコリーは 小節毎に区切られる 乾いた涙は雨となり降りしきる それは喪失から 逃げられないということ きっと 花が散るように思いは 褪せてゆくこと 季節が巡るように思い出は 消せないこと 相変わらず暮らしは際限なく 続くのに 扉を前にただ立ち尽くす私を どうか笑って欲しいんだよ