見慣れた名も知らぬ木の下で 結びし御籤もふと足元に 灯たぬ提灯と下がりゆくお昼 もう通らなくなった道 汗を流せば水筒の水 一気に飲み干して空になる荷物 少しずつ風景を変えて 広い窓に映された 誰もいない白い寝床 車の下の小鳥のたまご 剥がれたままの市外局番号 何も知らずの子連れの野鳥が纏う 優雅に舞え カイト鷹の終わらぬお呪い 生い茂る庭の草木も大旅行 丸まる背中と破れた麦わら帽 分かり合えない人が 向かい合うことも 廃れた七人の像の静けさとか 20年間も知らなかったこの場所 小砂利に混じった水切り石を ど真ん中で頭を出して不安げに 壁にかけられた優しい笑顔 黄金に染まる稲々の仕舞際 痛めた左腕で引いたモーター 目やに増す朝に ジパング生まれの白煙を くぐり抜けたら 瓦屋根が深く輝く