あなたはまだ気付いていないの 背後からその影を踏む靴音に こちらを振り返るその瞬間が合図 始まりのベルが鳴る 三日月が夜に埋もれる頃 既にそのひとつひとつが わたしの術中 耳元に注ぎ込んで 腐りそうなくらい甘やかなその声で 伸ばしても手が届かないなら この足で届く場所まで 行くしかないでしょう? 今更見えもしない 背中は追いかけない わたしだけのやり方で さあ、長い夜の幕開け 不意を演ずる指 この胸の内側に気付かれないように 余裕ぶってみせていたって 本当は精一杯なの 強がりで隠した素顔のわたしを まだ見抜かないで なだらかな肩の先 辿れば 微かに触れ合った互いの小指の縁 何気ない目配せが密にさだめた 罠の答えを知らしめる どれだけ近く距離を詰めても 群像に紛れた一人じゃ意味がない あなたのなかのわたしに 名前が付くまで もうあと瞬きひとつ まだ何も手に入れてないのに あなたを失えるはずもない 傷つくことなんて少しも怖くない 傷をつくることさえできない 距離が怖いだけ あなたの黒い瞳の 真ん中にわたしが映る たったそれだけで 泣き出してしまいそう 今夜きりではとても終われない 留めを刺して 約束のないサヨナラを その唇が匂わす前に 瞼をこじ開けるカーテンに 透けた朝の日差し そうよ、何もかも全部 絵空事 寄る辺ない明け方のループから 今ようやく抜け出して辿り着いた さあ、長い夢に幕引き 不意を演ずる指 この胸の内側に気付かれないように 今夜きりではとても終われない 留めを刺して 約束のないサヨナラを その唇が匂わす前に その心ごと絡め取らせて