回送列車 僕らを乗せて 風を切って走り出す昼下がり 外は眩しい 回送列車 スピードを上げて この狭い箱の中で二人きり 知らない場所へ 回送列車 僕らを乗せて 見たこともない景色を早送り 何か楽しい 回送列車 窓の外で 一瞬で蒸発する人の群れ グロテスク 回送列車 僕らを乗せて 耳の奥に響く一定のリズム 胸躍る 回送列車 窓の外は 不気味なほど透き通った空の色 吸い込まれてみたい 「二人にはもう 怖いものはない」って 少し震えて 大げさに言った 回送列車 陽が差し込んで はしゃいでいた二人を暖める 少し眠い 回送列車 窓の外は いつになっても退屈な緑色 目を閉じる 少し懐かしく 少し怖い夢 忘れたけれど 手は汗ばんでる 回送列車 もう日も暮れそう 空の色が二人をそそのかす 何しよう キャッチボール サッカー 花火大会 どうせならもっと楽しいこと しようよ この狭い箱が動きを止めたら 僕らはどうなってしまうんだろう つまりはそう そういうこと 何よりも愉快な一瞬の一生 回送列車 スピードを上げて この広い広い夜空を駆け抜ける 光を放ち 「やっぱり君も怖かったんだね」 その優しい声が震えてる この狭い箱が動きを止めたら また向こう側に走り出せばいい 見たことのある景色を巻き戻し それも悪くないね さあ 出発進行!
