羽搏く羽虫は太陽の翳りを知らせた 孤独にはきっと致死量が 存在している 傾く身体は屋根の上から落ちるより 早く朽ちていく 私はそれをただ一人着飾った 舞い散る埃にいつかの花を思い出す 晴れ渡る空に高く伸びていく橙色を 君の記憶だけ 泡沫の温もりだけが この部屋で唯一秒針を進める光だ だって、明日も昨日もない メヌエットに揺れる腐乱死体 そっと壁の向こう側に 絆される運命を 私はずっと信じていたいよ そんな言葉はとうの昔に ありふれた 時間という波の随に漂っている 行き先も分からないのに 帰る場所もないなんて まるで暗闇こそが 人生の最果てみたいだねって 笑っていた 子供の声は 錆びつく言葉と枯れ果てた 思考の海で 汚れたものほど 美しいものはないのだ 懐疑的だった永久の愛だ恋だも 君のいう通りだ この心臓の奥で眠っている 仰ぐ青天井 プロムナードと 銃声の響いたランデブー まだ覚めない保証など 何一つもないのにさ 私はずっと待っていたいよ 何時だって夢に見るんだよ 君がそっと 足の遅い私に差し伸べた右手を 蜃気楼か霊の類か 耐え果てる知力の先に 蹲った 灰色の天使の影を見た 一日目に光が死んで 二日目に青空が消えた 三日目に日が暗がって 四日目に鳥は空を嫌った 六日目に誰も彼も 運命に殺されていった 七日目に屋根裏部屋のドアが 音を立てて開いた 四半世紀途方に暮れて 人の言葉はとうに亡くした 舞い上がった埃が 夜を飾る星空を模倣して 行先も帰る場所も 初めから何処にもないのに 絡みついていた虚脱感の意味を ただ一人脳に巡らせた 子供の声は 遠く遠く鳴り止まぬまま