「聖女アナスタシアと従者 ルクセイン。 神のキューブを前に、 聖女は恭しく頭を垂れた。 セカイに待ち望まれた 五人目の魔女が今、 覚醒を迎えようとしていた。 此処にいる誰もが内なる願いを 秘め、未来を幻視する」 神に近付くはかつての敗者達 神に描かれた軌跡の通りに 完全なる覚醒の瞬間 その刹那 神に歯向かうは背徳の従者 神に突き立てる反逆の剣 手を伸ばした時には 肢体は閃光に穿たれて 「ぐっ……フランチェスカ、 戻ってこい……」 「ありがとう。 でも、わたしは、 ずっとわたしのまま。 何も知らない少女の頃が 『正しかった』 なんて決めつけないで。 今のわたしが正しいとも 思わないけれど、 確かな信念がある。 自分の足で歩いて、 自分で決めた現実なの。 闇を飲み干して、聲を聴いて、 掴み取った今なの」 「フラン……」 「ねえ、ルクス。 最期まで見届けていてって、私、 言ったじゃない」 「あなたの絶望とわたしの絶望を 同じにしないでよ……。 あなたが救ったのは、 あなただけ――」 あなたは私の奥に 誰の影を見ていたの? あなたが背負う原罪 あなたの為だけの贖罪 私の絶望に重ねないで 自己欺瞞に満ちていても それに気づいてなくても そんな英雄気取りこそ 人間らしくて愛しかった 神は哂う 最後のピースがようやく揃う、と 神は祝う "第五の魔女"の誕生を 『光だけでは少女は少女のまま 人を超えることは出来ない 深淵を、病を患うがいい 対極の境界で笑えるか? 敗者の残滓が“聖骸”という 名の付呪として誘えば 少女は目醒める……人は其れを "魔女"と呼ぶだろう』 全身を駆け巡る力 私は何処から何処までか 頭に響く生者と死者の聲 闇を飼い慣らせ 神をも欺くなら微笑んでみせろ、 さあ……! 「やっと此処まで辿り着いた。 果ての見えない旅が、 ようやく終わる刻が来たのね。 ――この罪は、 五つの穢れた残骸と共に」 「「少女フランチェスカ、 聖女アナスタシア、 そして 魔女としての私の名は――」」 嗚呼、この世の果てを願い 綴じ逝く物語を望む者 記憶の名は"セクサリス" ならば、その名を継ぎましょう そう、この世の果ての先に 新たな星を夢見て 失われる星の名は 最期の神の御名に相応しい 「行くよ、セクサリス」 在りし日の誓い 虚構へと沈みゆく中 自らに科した枷 神の傀儡を演じ続けてみせると 今宵悪夢は終わるだろう 真の解放――それは遠い約束 罪深い旅の終着点は間もなく 「さあ、始めましょう。 神堕ろしの儀を」 「――できるだけ優しく 殺してあげる」