殿 申し上げます 天下はまだ定まっておりません 私のことはお気になさらず 殿は 殿の大義に従い 突き進みくださいませ 「…愛」 ご安心ください 二つの御守りが ありますから 「二つの御守り…?」 一つは懐剣 いざという時 この身 守り抜きます もう一つは これです 「『京に出立する 折に殿からいただいた…御守り』」 殿の心宿る 御守り… 幼き折、片目失い 醜き己を忌み嫌った だが知った 筆一つで繋がる ひともじ ひともじ 筆一つで広がる ひともじ ひともじ 筆一つで拓ける ひともじ ひともじ 「…歌を詠むことで己の心と 向き合い、 文を書くことで多くの者と想いを 分け合った。 私一人ではどこへも行けぬ。 ここでただ 生きることもままならぬ…」 筆は、 刀に勝るとも劣らぬ… 「私の武器となった。 …そのはじめを愛に託そう」 あなたの ことはじめ 大切にいたします あなたの 物語を 心にしまって… 「ああ……いけませんな、 年を重ねますとどうも涙腺が 緩くなってしまう。えーごほん!」 「そんな最中……大崎・葛西にて 一揆が発生! それを政宗が 煽動しているというあらぬ噂が 立ち、 政宗はその弁明に 追われることとなったのです」 疑いを晴らさねば! この筆で… これは、負けられぬ戦じゃ 武器を持て! 各所へ 各所へ 送る書状が 私を守る鎧兜 斬れ味鋭き刀 筆よ 書状よ 私を守れ…!! 「頼むぞ」 「はっ!」