指紋一つ無いガラスの陳列棚には 貴郎好みの脂身が少ない精肉 今日は売り切れで 店主の"毎度"が聞けませんでした 目先に在る幸せの貌が 古家の瓦みたく 沢山亀裂日々割れてく この生活を愛しています お隣さんは感じの良い老夫婦で 雀やらに餌を与えて ご挨拶がてらに微笑みかけて下さる 裕福立派な庭でした 「あら、やだ。」なんて口癖が 私も板着く頃ですが まだハタチの気持ちで居て 周りは娘や息子が居るけれど 「それはゆーれーみたいな うんめいでした。」 借り物の様な気がしてならない 肌や骨が僕である理窟を 詰められるのは触れられない感情 僕が彼や彼女でも在る様に 「ちんれつだなには あなたごのみのあぶらみが すくないせいにくきょうはうりきれ で てんしゅのまいどがきけませんでし た めさきにあるしあわせの かたちがふるやのかわらみたく 沢山の亀裂日々割れてく この生活を愛しています。」