君のこと思い出そうとしたんだ。 怒った顔も心が潤けるのは もう整理されているから。 肩に来る小さな頭がどうか、 目を合わせて話す生硬さがどうか 報われますように。 なしくずしに続いた関係を 崩してしまいたくなるような 余計を。 正解だったかどうかなんてわからな いけど、 疑うことじゃない。 それくらい、わかるよ。 春色のフレアスカートを 穿いていた。 桜が引っかかって乙なものだった。 僕らは足を引っ張り合ってきたけど 手を引いていくことも出来たよな。 冗長な冗談さえ詰まるほど 余裕が 無くなったのはいつからだろうね。 あれ、いつからだっけ。 緩やかに死んでいく情があった。 なのに延命を望まなかった。 なんか、わかっていたんだろうね。 なぁ、「私には似合わない」 なんて言うなよ。 そういう色ももっと 着ればいいのに。似合うよ。 その一言さえ 言わなかったくせにさ。 何を返せる気でいたんだろう。 君の、たまに雑な言葉づかい。 釣られるんだよ。 褒められたもんじゃないよな。 残したい癖では決してないけど 消したい癖では決してないんだ。 振り返る拍子に舞っていた匂いは 思えば君のものだ。忘れてないや。 桜が引っかかってはたく仕草の 神経質そうなその指を。 分かり合った気でいるのは これ以上知るのを放棄したいから。 理解とは 都合の良い勘でしかないから。 僕が君の手を引くから、 君は足を引っ張っていいよ。 そしたらさ。そしたらさ。 驚いた。もう一年が経つんだ。 春が来るんだ。 君のいない春が在るんだ。 気付くのに冬までかかったよ。