半覚醒の気だるい目のままで 何も無い海の向こうを眺めていた。 真上の太陽はいつしか傾いて、 夜の帳と共に降りていく。 あれからどれくらいの月日が 経ったろう。 勇ましさなど無かった旅立ちから。 綺麗な目で世界を観ていた君が、 なじられ踏みつけられて 濁っていった日から。 私達の始まりは、 青い春の苦さばかりが 詰まっていて。 でも、 描いた地図と共に手放す事は無いと そう思っていたな。 進む中途で船は傷んでいって、 その度に治して立ち直って。 嵐の夜を怯えながら越えた先の、 朝焼けはとても綺麗だったな。 されど海の広さや、 先や隣を行く人達の速さを 目にしたら。 竦む足や君の震えている様を、 見過す事は出来なかったよ。 それでも、 私達には行きたい場所があった。 そこに至る 過程がどんなに無様でも、 朽ちた船の中にいつか出会った 人の面影を、 見つけてしまっても。 何があったって、 そのために涙を 拭いてこれただろう? なのに、それなのに。 そこが何処か思い出せないんだ。 擦り切れて文字も読めなくなった 地図と 錆びついてしまったコンパスを 抱え、 ただただ海の向こうを眺めても、 街明かりの一つさえも 見えない極夜の中。 確かに分かったのは、 君はもう 長くはここに居られない事。 「恐怖と共に色々失くしてさ、 それが君を弱らせていったんだ。」 ごめんなんて言ったってもう 遅いんだろう? 君の繊細さ脆弱さは何よりさ、 私の心の中に住んじゃったせい。 そう私の弱さのせいなんだよ。 どうしたってずっと 一緒に居られない事は 分かっていて私達は旅を始めたよ、 きっと。 だけどさ、まだ。 生きていてほしいんだよ。 ただ漂うのだとしても。 消してしまいたくないんだよ。 君と生きてきた記憶を。 言い聞かせて書き残さなければ 消えてゆく信念で、 どこまで行けるのだろう。 半ばで散った人達の姿は、 ここから見える事はない。 いつか私も巨大な海の一部に なるのだろうけど。 何があったって、 まだこの旅を続けていたいよ。