呼んでみたって泣いたって、 二度とあの日は帰りゃしない。 だのに、 たゞ何となくこゝろ惹かれて、 こんな涯まで来て了った・・・・・ 汽車の窓から 見るだけじゃ なつかしすぎる あの娘を泣かせた 山の町 別れない 死んでほしいと すがりついた肩に アカシヤの花が 散っていたよ 俺は弱虫だったのか。 いや、卑怯者だった。 今になって是ほどあの娘が 恋しいのに、 俺はあの娘から逃げたのだ 命までかけてくれた、 女のまごゝろを捨てて了った・・・ 駅の広場も 山裾も あの日のまゝだ 牧場の夕陽も おなじだが ふたりして じっと見上げた やさし花の匂う アカシヤが寒く 枯れているよ 風に震える 枯れ枝は 見るさえつらい 果敢ないふたりの 恋のあと 北国の春が 逝くのに ひとり熱いなみだ アカシヤの蔭で 窃っと拭くよ