長袖を出した夜に 君のピアスが転がってきた 返す理由ならあるはずなのに 連絡する理由にはできなかった トーク画面を上まで戻れば 仲良しだった証拠ばかりで 最後の「分かった」の四文字だけが 今のふたりを説明してる 嫌いになったわけじゃない 好きでいられなくなっただけ 似ているようで違う言葉を 僕らは選べず終わったね 十月には他人になる 君の予定も知らないまま あんなに近くで眠ったのに 今じゃ誕生日しか知らない 寒くなったねと送るだけで 戻れる夜もあったのかな 戻りたいのか分からないくせに 戻れないことだけ寂しかった 駅前で君を見たことも 結局誰にも話せなかった 声をかけなかった僕のことを 優しさと呼んで誤魔化している 新しい恋をしてほしいとか 幸せならそれでいいとか 綺麗な言葉を並べるたびに 本音が少し汚れて見えた 君の嫌いだったところを ひとつずつ思い出してみても それを知っていること自体が まだ好きみたいでやめた 十月には他人になる 好きな映画も知ってる他人 コーヒーに砂糖を入れないことも 眠るとき丸くなることも 世界で僕しか知らなかった 君をいくつも持っているのに これから君が泣いたとしても その理由さえ聞けないんだね 恋人から他人になるには 何日あれば足りるんだろう 写真を消して 名前を消して それでも匂いは消えないまま 忘れることが前を向くことなら 僕は後ろ向きでも構わない だけど君が振り返ったとき そこにいるのはもうやめたい 十月には他人になる 君も僕も望まないまま さよならさえ上手く言えなかった ふたりには似合いの終わり方 寒くなったねと呟いた 届くはずのない帰り道 君を忘れるためじゃなくて 思い出にするため歩いていく あんなに近くで眠ったこと いつか夢だったようになる 十月には他人になる それでも君を知っている他人 君のピアスは引き出しの奥 返せないままで冬を待つ 次に会っても気づかないふりを 僕らはきっと上手くやれる
