あの時わたしが 言えなかった言葉が 部屋の片隅にこぼれていた 渡せないまま 古くなった手紙の 最後の一行にこぼれていた 言えなかった理由と 言えなかった言葉が おんなじだから泣いてしまう こんなに身近で 短い一言で わたしは不意に泣いてしまう 遠い街 互いに少しずつ 忘れていくんだろうな 一つずつの夜を越えて 左手の指先 ガラクタやカレンダーが そうして意味を持ったなら良いな 渡せないまま 古くなった手紙を もう一度綺麗に折り畳む わたしは岸まで 夜を泳いでいく 笹舟みたく揺れながら あの時あなたに 言えなかった言葉を 地図の代わりに持っていくよ 「愛してる」 また会えたら 「遅過ぎる」と どうか笑って