かつて人形師が愛娘の屍骸で作り 上げたと云う 幼い頃に箱で眠る「それ」 と出会ってから 生きた女より美しい紛い物 硝子細工の瞳が牢のように私を 囚えた ずっと私を呼ぶ幻聴が聞こえる 逃れようにも誰も愛せない 人間で満たせぬこの渇きを 甘く嘲笑う「私に触れて」 ―ここへいらして 可愛い人 人形遊びに耽りましょう 球体関節 凍てつく肌に 劣情燈し さぁ、私に触れて― 夫は優しく良くしてくれていた 余所余所しいほどに 私を通して別の女を見てる 予感がして ある夜 忍ぶ彼の跡を付け 部屋を覗き 硝子細工の瞳と目が合い 嘲笑った気がした 「それ」が私でなく 私が「それ」の代わりなのと 気づいて泣いた 私が「それ」 になれたら二人愛し合えた? 「私に触れて」 ―ここへいらして 可愛い人 人形遊びに耽りましょう 球体関節 凍てつく肌に 劣情燈し さぁ、私に触れて― ずっと私を呼ぶ幻聴が聞こえる 逃れようにも誰も愛せない 迷いを断て 斧振り上げ 幻聴を止めろ! ―出来心か 悪戯か 人形に代わり箱で眠る 彼が蓋を開けたなら 手を伸ばして さぁ、私に触れて― 嗚呼 何度となく振り下ろした 幻覚のはずの血に咽んで 振り返れば 今、目の前で壊したはずの「それ」 が嘲笑った ―ここへいらして 可愛い玩具 人形遊びに耽りましょう 真っ赤なお化粧とても似合うわ 操られて さぁ、私に触れて―