ただ花を愛でていたい きれいなものをきれいと それだけでよかったはずなのにね 空を見上げても かつての私はいなくて ”この青を何色と喩えれば?” ああとかこうとかこねくりまわして 掌で生温くなった果てに 色は濁った あの日 思いを打ち明けたら音楽になった 音楽になった それだけなんだ 今じゃ 安易に身につけた語彙でかためた 要塞 あくまで砂の城 ひと吹きの風さえ凌げやしない 「あなたのために歌います」 そんなひたむきさは何処 ”あなた” の輪郭がぼやけてしまって 星を見つけてもかつてほど 輝いていなくて 寒くはないのにどこか冷たい にっちもさっちもいかなくなって その場で足踏みしているせいで 緑が枯れている あの日 息を吐くように歌を歌っていた 歌を歌っていた それだけだったんだ 今だって 声にしたいのに口にする言葉が 見つからない 何となく呼吸が浅くて どうやって息をしてたんだっけ 何を美しいと感じてたんだっけ あの日どうして涙を流したんだっけ 手当たり次第掴んでみたって 私のものにできたものなんて まだ 数えるほどしかない 今も暁の中で歌を歌っている 音をつないでいる 明けるかもわからぬ 暗い刻に あの日 思いを打ち明けたら音楽になった 音楽になったんだ ならばもう一度 私そのものを瞳に映して 瞳に映して 花を愛でてみよう