いつになく 予報に忠実に 現れた 黒い雷雲 追いかける音との 時間差を 指折り数えた 夏至 何も言わなかった あのときの左瞼 小さなシグナル ただ 私に出来たことといえば 目をそらして 笑うだけ ほんとは 何ひとつ 言うべき台詞など ないのに 迷った挙句 口をついたのは 誰にも 届かない 空虚な吐息と アナグラム 点滅信号 渡れずパニック 見慣れた入り口の前 如雨露でなぞった レインブーツの足跡 そのうち降り出すはず 霧雨が 全て消してくれるから 誰かの待つ温度と 部屋灯り もう 雷は聞こえないでしょう 導かれて 吸い込まれた影に 追い越し際 さようなら