暑い日々が続く。 汗をかいたペットボトルをあおり、 空(から)になったそれを 君はぞんざいに振った。 「これでボトルシップ作れるかな」 君はいつでも突飛だ。 予想外で、規格外だ。 「どうだろう」 僕はというと凡庸だ。 予想内で、規格内だ。 やにわに落とされた言葉にも 気の利いたことを返してやれない。 「君が作って」 そう言って渡された 空(から)のペットボトル。 強い陽射しを透かして輝いている。 途方に暮れて見上げた空にはそびえ 立つように浮かぶ入道雲。 油絵みたいに鮮やかで、 まるで帆を張った船だ。 僕は空のペットボトルを 空に掲げる。 目の覚めるような青と帆船を閉じ 込めれば、 即席ボトルシップの出来上がりだ。 頓知に逃げたね、と君は笑う。 手厳しいコメントに、僕も笑った。 強い風に流されて、 船は大海を進んでいく。 そのすぐ傍を飛行機が 横切っていった。 今日より先も、 嫌になるぐらい暑い日々は 続いていく。 それでも、 こうして隣で君が 笑っていてくれるなら、 と僕はいつだって思っているんだ。 君は知らないだろうけど。