かじかんだその手で綴っては すげなく打ち捨てられていた 錆びついたトタンを剥がしては 匂い立つ雨と舗装道 灰色の杜で歌っては 苔むす岩を天と呼んだ 濡れ髪をきつく絞っては 黒く立ち込む心模様 まるで嘘みたいだよ 戸惑って隠した茜や まるで空想みたいだよ 頬被ってこぼした 「ああ、もう、嫌」 敬虔な言を綴っては あえなく打ち捨てられていた 落ちる雨音で目覚しては 墨の欠片で描くような物を 雪駄を脱いで放っては ぬるい踵で木々を踏んだ 止水に波紋を落としては 夢の続きを見ているような鼓動 まるで嘘みたいだよ 泡食って壊した雨樋や まるで空想みたいだよ 死んだ材で造ったあの家が まるで嘘みたいだよ 赤黒くて腐ったあの血や まるで空想みたいだよ 投げ打ってこぼした 「ああ、もういいや」