名前の中に生まれた子どもたちが 名前の中を旅する 名前の中に生まれた子どもたちが 名前に名前をつけてゆく (冬を眠らせて黙る造船所) (鯨が描いた国境線) (銀河を写し取った手遊び) (春風に焼かれた言語) 退屈を花のように飾って 肺とは別の 忘れてた臓器で 季節とやりとりして (口移しでもらった図鑑) (重力を離れた魚が泳ぐ雲量計) (寝顔を盗んだ遊牧⺠) (埋葬というにはあまりにも 豊かなままの物語) 筆跡は手紙の中で呼吸を続けていて 「歌なんてただの聞き間違いだよ」 と優しく語りかける それでも、 これまで覚えた歌は 愛おしい古傷のように 脈打っている 擬音語だけで世界を記述できていた 日のこと もう思い出せないけど 空耳で編んだ船を川に流せば 僕らはいつでも帰り道になれる 文明の欠伸の子どもたちの歌 このバグが治る前に会いましょう