“ 滑り台 ”
幼い頃に遊んだ滑り台
手すりに頼り
スチールの階段を上がる
それほど高いわけでもないのに
そこからの景色は
普段とはまったく違う世界
大人の身長
木の葉に手が届き
お寺の屋根の高さまで
後ろから友達に急かされて
傾斜を滑り落ちる
見えない重力に引っ張られて
ちょっとしたドキドキ感
落ちていく感覚
それにあまりに陶酔してしまうと
着地に失敗して怪我をする
それでもまた
走って階段の下に並んだ
大きな怪我
小さな怪我
小さな公園のベンチに座り
子供たちが元気に遊ぶ
滑り台を見てた
何回も繰り返す子
はじめから近づこうとしない子
一緒に滑ってほしいと
お母さんに泣きついている子も
まるで社会を見ているような
人生を振り返ってしまいそうな
登っては落ちる
たぶん大切なのは着地なんだ
そんなことを考えて
ゆっくりとベンチから立ち上がる
コンビニの袋をブラブラさせて
海辺をアパートへ向かう
海は青くどこまでも深い
ここが僕の最後の着地地点
何度も登り、そして滑り落ちた
ひどい怪我も幾度かしたけれど
悪くない着地では
あったんじゃないかなと思う
なんて考えながら
また浜の砂に
足を取られて転びそうになった
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