このページをシェア
説明文
“ 夢でシャッター ”
心地よい空調
穏やかに揺れる船室
どこへ向かってたんだっけ？
低く鈍いエンジン音
気持ちよくて
シートにもたれうとうとと
笑い声にめざめれば
写真でしか知らない母がいて
もう二十年以上も前に
亡くなった父と楽しそうに話す姿
若い頃に片想いしていた
そんな可愛いあの娘がいて
突然旅立ったあいつの顔も
起きあがってさ
話したいと思うのに
どうしてもはっきり目がさめない
何を話しているのかな？
みんな笑顔で夢中でお喋り
言いたいこともあるけれど
それよりスマホを取り出して
今はみんなの写真が撮りたい
動かない体
声の出ない口をぱくぱく
なんとかナップをまさぐって
カメラを開いてシャッターパシャリ
そういや
優しいこの船は
どこへ向かって走ってるんだったけ？
ひろがる雲のあいまから
眩しく射し込む天使の梯子
まぶたを開いてよく見れば
それはカーテンの隙間から入る光で
あの楽しげな喋り声は
ケージで歌うインコだと気づく
ベッドの棚には見慣れた写真立て
猫を抱いた彼女の笑顔
まさかねって思って
スマホを開いて写真を確認してみたり
…もっと見る
