校長先生に逆らって 逃げ出してしまった日のことも 逃走本能に従って 走り出してしまっただけなのさ 勇敢なあの子は校庭に残って 赤いシャツの裾をつかんでいた 沈んでいく夕日の陰に君は立って 野球ボール ちょうど一昨年の夏だっけ 舟に乗ってトビウオを見たよね きっとカナヅチの君だって 身を乗り出して目をきらめかしてたのさ 勇敢なあの子は防波堤に立って 大ウツボの巣食う湾に飛び込んだ 西瓜を食べながら僕は鼻をすすって テトラポットの上 勇敢なあの子は染めた髪を切って 白いシャツの襟を正していた 本当のところは誰も知らなくって 消えたグラブ 勇敢に見えたあの子だって 怖くなって動けなかっただけなのさ とうとう我慢できなくなって 飛び込んでおしっこをしただけなのさ