どうか お願い 私を殺して [はあ?] 生きていても苦しいだけ 望んだ道 あきらめるしかなくて [なんでだ?] 家族が反対なのです カゴの鳥のように 自由うばわれ [死にたきゃ勝手に 死にゃいいだろ。] [クリスチャンは自殺できません。] [なぜゴーストに頼む?] [誰かに人殺しの罪を 負わせることはできません。でも] あるひとに聞きました あなたならできると かつて 殺しを仕事にしてたと [決闘の代理人だ。 殺し屋じゃねえ。] あなただけが頼りです 殺してください すぐに こんな生き方はもう 無理です [断る。あんた知らねえんだ、 ゴーストが人間を殺す ってことの意味を。] [どういうことですか?] [俺はあんたみてえな女の 本性を知ってる。 関わりたくねえ。帰ってくれ。] [家に帰れば、親の望む相手と 結婚しなくてはなりません。] [そんなにひどい男なのか?] [誠実な方です。 お慕いしていた時もありました。 でも、結婚はできません。 私には使命があります。] [使命?] [気づいたのは、何年か前。 別荘の近くにある農家で、 男の子が病気で亡くなったと 聞いて、 私はとても驚きました。 毎年夏になると 食べ物を届けていたので、 赤ちゃんのときから 知っている子で、 私はショックを受けて お墓を訪ねました。] [こんにちは。] [これはこれは、お嬢様。] [坊やのためにお祈りしたくて。] [ありがとうございます。] 何しに来たのさ もう遅いよ 弟は死んだ たった五つで 手当も 受けられず 薬もないままで [今さら祈ってなんになんのさ!] [ごめんなさい。] [帰って! 帰ってよ!] [あのとき気づいたんです。] 神様が 示した この身を捧げ お仕えする道を 長い間 迷って ようやく見つけた これこそ 私の道 この世に生まれてきた意味に やっと気づいた 涙が あふれて この胸が 熱く燃えた 光が 射しこんできた 救いたい 苦しむひとを 癒したい おびえるひとを 病気で倒れたひとを 支える看護婦になる それが使命 [なったのか、看護婦に?] [はい。でも使命を果たすには、 もっと厳しい道へ 進むべきだと感じています。 クリミアへ行きたい。 従軍看護婦として。] [戦場に行くってのか?] [家族が断固として ゆるしてくれません。 でも自分の心をいつわって 生きてゆくことはできない。 だから、親の目を盗んで やっと家を抜け出して お願いにきたんです。] [お嬢ちゃんが親に反抗して 負けたから死にてえってのか。] あなたにはわからない 私の家族に 会えばわかるはずです どうか一緒に来てください 我が家にどうか! [俺はもう100年、 ここから一歩も出てねえんだ。] お願いです [あんたのお願いなんか どうでもいいが、 うるせえから行くだけ 行ってやる。] [ありがとうございます。] [でも、殺す気はねえからな。 あんた、名前は?] [フローレンス・ナイチンゲール。 フローとお呼びください。 さあ、参りましょう。] 思いつめた眼差しの奥に 俺が見たのは 真実か ありふれた わがままなのか おもしれえな これは悲劇か 喜劇か