海底の無い夜だ 幸せにするよと言ったのに 気づいたら恋に落ちて 裏切りの果実を頬張る 痛いほど心地の良い 仄暗いほど鮮やかな 闇の中を泳いでいる 夜に浸かって 縋ってしまわないように 空っぽの瓶に 呼吸を混ぜた 夜に浸して このまま16.3°Cの熱で 利き手の患部を冷やして ねぇ、少しでいいから冷まして 海底の無い夜だ どこまでも深く沈むような 無責任な恋に落ちて 窓際の写真が倒れる 時間軸ずらしても また傷んでいく果物に 「原罪」と名付けていた 夜に浸かって 縋ってしまわないように 空っぽの瓶に 水煙(けむり)を混ぜた 夜に浸して その身に突き立てたナイフの先に 微量の粒子を塗して どうか今夜だけは許して レンズの欠けた メガネを掛けた それでもまだ見つからないや ほんの僅かなアバンチュールが この泡を映して… 夜に浸かって 縋ってしまわないように 空っぽの瓶に 吐息を混ぜた 夜に浸して その身に突き立てたナイフの先に あなたの全部を塗して どうか今夜だけは許して