「月日は百代(はくたい)の 過客(かかく)にして、 行きか(こ)う年も又旅人なり 日々旅にして、 旅を栖(すみか)とす」 水も清澄 深川の 草葺く庵 採荼庵(さいとあん) 梅に鶯 すすきに月と 過ぎ行く季節(とき)に せかされて 芭蕉は みちのく 旅に立つ 夏草や 兵(つわもの)どもが 夢のあと 人は旅して 生きてゆく 行く先々に 出会いあり 杖と編笠 墨染め衣 十七文字に 生命(いのち)かけ 芭蕉は心で 俳句(うた)を描く 荒海や 佐渡によこたう 天の川 さらば千住よ 見送りの 親しき人よ すこやかに 曾良(そら)を従え あと振り向かず 心ははるか 風雅の国へ 西陽は伸びゆく 背影 閑(しず)かさや 岩にしみ入る 蝉の声