「嗚呼、何時も見ている筈の私の顔 が思い出せない。 此れは誰で、彼れは誰で、其れは誰 で、私は誰で…。」 音の無い言の葉を貪っては 喰い散らかした 吐き出す真っ赤な嘘 紅させば饒舌 戯言も命吹き込めば真 故に世迷えば皆右を向くばかり 只「居る」だけで良いのです 寧ろ「在る」だけでも良いのです 背中押され、 手を引かれるでしょう ほら… 父の種子で孕んで 母の穴から這い出でて 知らぬ名を与えられて 生かされた私は誰? 私が私で無くなる様に 貴方が誰でも構わぬ様に 溢れた嘘を塗りたくれば 「お初にお目に掛かります」 私が誰かの化けの皮で ひん剥き晒せば何処の何方? 嗚呼 正に理 誰かが「私」を生きる様に 誰かが「貴方」を生きる様に 塗れた嘘を塗りたくれば 「お初にお目に掛かります」 私も貴方も何処の何方も ひん剥き晒せば皆同じ顔 嗚呼 正に野箆坊 「嗚呼、何時も見ていた筈の貴方の 顔が思い出せない。 此れは私、彼れは私、其れは私、貴 方は誰…?」 此の命を燃やす意味を 此の命を絶やす意味を 指咥え強請り欲しがる 皿の上に盛り付けられた 都合の良い答え 皿の上に盛り付けられた 誰が為の都合の良い私 「嗚呼、何時も見ていた筈の私の顔 が思い出せない。」 溺愛の末路は磨き抜かれた誰か好み の出来合いの私でした。