言葉になってあなたになって 嘘を纏った僕の影に 桜が散って思い出になって 今も眠れないまま 春先の河原を歩く あなたは袖をそっと捲くった 国道を少し下った先の桜が 綺麗だから 痛みも愁いもどうでもいいと思った このまま目をつぶればずっと 思い出になってしまう気がしたから ひらりと舞った花の群れに 呼吸の一つも出来ないまま 言葉になってあなたになって 嘘を纏った僕の影に 桜が散って思い出になって 今もあなたを待つから 空回る僕の手を引いて いつまでもあなたの夢の中 染まる頬をただなぞる 春霞の奥で揺れるあなたの瞳は少し 虚ろで 木陰の下で眠るその花がいつまでも 愛おしくて このまま時間が止まればいいと 思った あの並木を抜けたらずっと 変わらないままでいられる 気がしたの ため息を吐いた僕は独り 歩き方さえも分からぬまま 言葉を縫ってあなたになった あの夏の終わりを泳いで さよならなんて言い出さないで ずっと答えを待つから うろたえる僕の手を引いて 夕暮れの奥ではにかんだ あなたの夢をまだ見てる あの風が 止んだらこの春はあなたの 季節になる 色褪せないように溢れないように あなたの言葉を飲み込んでる 言葉になんてなりやしなくて あなたの全部が苦しくなって さよならに似たあの日の香りを 今も憶えているから 花めくあなたの手を引いて どこまでも遠く楽園まで 消えてしまえたら 触れたら全部壊れてしまった あなたの横顔に見惚れて あの日挟んだ栞の続きを今から 数えていくから 空回る僕の手を引いて いつまでもあなたの夢の中 染まる頬をただ なぞるなぞる