音楽の授業で張り切るタイプを 冷笑していた時期を過ぎて 一生懸命なソプラノに とうとう 涙ぐむようになってしまった 振り返れば、 僕は本当につまらない人間で こうして 感傷に 浸るあたりやはりつまらない人間だ 振り返れば、 あの子も何一つ変わることなく 少し離れた丸い瞳で、 今もやさしく笑いかけてくれる ただ成長していないだけ、 と笑うけれど 誰にも触れられない場所に秘め 続けた綺麗なものを 揺らぐことなく持ち 続けるということは どんなことよりも激しい諍いなのだ それが一番利口な生き方、 などとは言いたくない 言葉を選ぶ僕にあの子は大きな口で 笑う 褒めるだけのことにそこまで頭を 悩ませないでと 高く、迷いなく、飛び跳ねるような
