耳の裏のほくろまで あんたを知っていたけど 肝心なことは何も知らないみたいだ 野良猫との挨拶や 柚子胡椒の匙加減 取るに足らん”てにをは”が 全部だったりする 乾いたキスで塞ぐ涙の跡は 戻れない決意の味 ほろ苦くて ささくれた心で叫ぶんだ あんたの優しさが欲しく泣く 上塗って嘘でもいいから この頬に 瘡蓋になれど剥がれ落ちて ケロイドのままでいる心 この部屋で僕は今日も爪を噛んだ 皮膚感覚を頼りに 海月のように揺蕩って 何も誹らぬあんたが誇らしく見えた 古い文庫めくるように 指でなぞる輪郭の こびりついた埃まで愛おしく想ふ 鳴らないラ♭(※)では もう真似できない あんたの弾くピアノが大好きだった ひねくれた言葉で突き離す 自分の愚かしさに苦笑する 「ごめんね ありがとう」って 端数のお釣り投げて 後ろ髪引かれ崩れ落ちる あの暖くて痛いあれが 今更愛だった、なんて気づいた始末 耳の裏のほくろまで 肝心なことは何も… ささくれた心で叫ぶんだ あんたの優しさが欲しく泣く 上塗ったけど剥がれ落ちた 鱗のように 後ろ髪引かれ崩れ落ちる あの暖くて痛いあれが 今更愛だった、なんて気づいた始末 暖かい夢だったなぁ さよならの字舞う あんたを知っていたけど、 知らない みたいだ