打ち捨てた海岸の瓶は 割れて石になるの 美しい石 ビルとビルの間の店で 古い本を見た カビの生えた表紙 1年前 10年前 どこかで割れた瓶を わたしがそっと拾う 100年前のページの片隅で 同じ気持ちで誰かが泣いていたの 「悲しみは海岸の瓶だから 100年経ったら貴方に拾って 欲しい」と 穴に落ちてしまったみたいに どうにもならないと しぼんでしまう心 本当は 小さな波でも さらってくれるような くぼみなんだ きっと 大丈夫だって 安心だって 100年前の言葉 話しかけてくれる 100年前のページの片隅で 同じ気持ちで誰かが泣いていたの 「悲しみは海岸の瓶だから 100年経ったら貴方に拾って 欲しい」と 拾ったよ 貴方のシーグラス 悲しい色でも反射で煌めいていたの 悲しみは海岸の瓶だから いつかどこかで誰かに拾って 欲しいと 泣いていたの 煌めいたの 打ち捨てた海岸の瓶は 割れて石になるの 美しい石