焼けるような日差しのその隙間 アスファルトがぐつぐつ煮えている 生温い風が吹く昼下がり 君は覚えていますか ツンと刺激的な塩素の匂いを 掻き消すみたいな閃光 はじけて 名前も知らない君と目が合った 「一緒に遊ぼうよ」 走り出す 軽やかに 理由もなく 手を繋ぐ 見上げた空が蒼い どこまでも いつまでも 終わらない 君となら行けそうな気がした 明日もきっと会えるよね 僕ら約束したんだ 影法師ふたつ並んだ 当たり前みたいに ねえ 夏はいつも突然に 始まって終わっていく ずっと続くと思った 君の顔が思い出せない 明日終わりを告げる夏休みが いつもより全然寂しくなくて 浮かれて君と写真を撮ったこと 僕は覚えているのに 風に揺れる真っ白なスカートの その皴をひたすら数えていた ふと自然に目に映った不自然 見て見ぬふりをした きのう どんなふうに遊んでたっけ だんだん薄くなる思い出 確かに存在していたはずの、 隣で笑っていたはずの、 ともだち? 君があの時どんな 表情をしていたのかを はっきりと思い出せない さよならだって言ってない 新しい季節がきっと 君を攫ったんだきっと 透明で強烈な 記憶だけが焼き付いて いつのまにか忘れた 真っ白な蜃気楼 じわじわとぼやけていって 夏の匂いを残し 消えた 理解不能な現象 不思議な君はきっと レンズには収まらない どうかしてる 僕のまぼろし