モノクロの共感

歌詞

鳴りやまないキーボードの音 隣の席で誰かがため息つく 「どうしたの？」って覗き込むけど 興味なんてこれっぽっちも 湧いてない 聞き飽きた愚痴に相槌を打って 空っぽの言葉で励ましてみせる 「ありがとう、楽になったよ」 その一言のためだけに僕は「僕」 を演じる 「いい人だね」ってみんな 無邪気に笑うけど その瞳の奥に映る僕は 誰なんだろう 貼り付けたような共感が 上手すぎて自分でも吐き気がする 本当は私 優しい人間じゃない 悪魔が心の椅子に座って 嘲笑ってる 君が流す綺麗な涙も 遠い国の映画みたいに どこか他人事 お願い これ以上 信じないで その純粋さで 私の仮面を剥がさないで 誰も本音で話さない会議 正論めいた意見に頷いてる グループチャットに流れる 「いいね」のスタンプ 思考を止めて 指先だけで同調する プロジェクトの成功を祝い合う声 拍手をしながら冷めた目をしてる 誰かの手柄も 誰かの失敗も 僕の心にはさざなみ一つ立たない ライバルのミスを資料の隅で 見つけた 心配するフリして駆け寄りながら 胸の奥で小さくガッツポーズをした そんな 自分に気づかないワケがないだろう 本当は私 冷たい人間なんだ 誰かの絶望をそっと 蜜のように舐めてる 君が語る未来の希望さえ 「叶わなければいいのに」と 小さく願ってる お願い どうか気づかないで すぐ隣で微笑む悪魔に どうか いつからだろうな 心に分厚い壁ができて どんな感情もノックだけして 帰ってゆく 昔はきっと もっとちゃんと泣けてた もっとちゃんと誰かのために 怒れてたのに ああ 私は優しい人間じゃない 悪魔が心に棲みついて もう追い出せないんだ 君がくれる「ありがとう」さえも 私の罪を重くする呪いのようだ お願い これ以上 愛さないで 偽物の優しさで 君を傷つける前に 終業のチャイムが響く モニターの電源を落とす 「お先に失礼します」 完璧な笑顔でドアを出て 明日もまた上手に演じることを 誓った