サイレンの音は忘れた 大したことなかった 大体そんなことにして時代は丸め 込まれていく 喉元を過ぎた世界は透明な 遺跡のよう 影送りしたら 空には青しかなく 街には建物が詰められ 音もない 私は息を吸えるのか? 死ぬまで安らげるのか? 老婆が笑っている 私も笑い返す 何一つ足らぬことのない まるでそれしか景色が 存在しないかのように 揺蕩うように 三月が穏やかに笑っている 三月が穏やかに 誰一人変わることのないような 顔をして 誰一人変わることのないような 顔をして 誰一人 誰一人 誰一人 誰一人 誰一人 誰一人 誰一人 誰一人 まるで全てと無縁のように バッグと世間話を運んでいる 誰一人 無縁のように 屋上にのぼると遠くが灰色で 私の心のどこかにあった空襲の音が 大きく唸りをあげ始めた