小さな水槽で違う速度に 流れる生活をじっと見ていた 世間に巣食う淡い理想像は 水面に歪んで泡へ変わっている その微かな波を ふたり見上げている ぽかんと口を開けて わからずにいる ねえ、わけもないけどキスをしよう 苦しそうな髪を解いて 水も失くしたように跳ね回る うざったいこの熱帯夜に 揺れているのは僕らだけ 君の鱗を剥いであげるよ ねえ、あれがそう 人の生きる世界 数ミリのガラスが ずっと隔てている こちらを見ている ねえ、わけもないけどキスをしよう 縺れた憂いはほっといて 水も失くしたように跳ね回る うざったいこの熱帯夜に 息をしている僕らだけ ふたりは水槽の中いつまでも いつまでも