思い返せばいつも。 ランドセルに詰め込み過ぎて、 何より1番大事な物を忘れてた。 また絡まったり解けたり、 靴紐の様な縁の蟠り。 そんな想いは—— 靴底の泥程度になるんだろ。 日暮を刺す踏切の音が。 ただ私を急かす様、鳴いてる。 カラスと一緒に進みましょう。 誰もが大人になって、 何れ忘れてしまうのだろう。 夕暮れ時、 鐘の侘しさや季節の香りさえ。 きっと大人になって、 何れ感じなくなるんだろう。 握り締める小銭の重みや、 あの子の温もりさえ。 失って、気づいて、生きてく。 心の箱は、いつの間に埃被ってさ。 記憶の鍵が、錆び付いて開かない。 足し算だった筈の交友関係は、 いつの間にか引き算と化し。 永遠なんて無いし、 だから利害で割ってさ。 残ったのはハリボテの様な安堵か。 大人になるということ。 それは、 本音を喉の奥にしまうこと。 通りすぎる風に、 名前をつけなくなるということ。 空の青さの理由を、 もう探さなくなること。 美しい雨を、 どこかで静かに憂うこと。 6月の夕立の甘い香りに、 心が動かなくなった。 路地裏に咲く花の名を、 知りたいと思わなくなった。 残ったのは、台本通りの安心。 治す術がない、 確かに感情が擦り減る 熱の無い風邪みたい、 それは病の様—— ——なんて戯言。 街に響く踏切の音が。 肺の奥の奥まで、響いてる。 カラスと一緒に帰りましょう。 ———進みましょう。 誰もが大人になってさ。 今大人になって、 過ぎ去っては見える事。 春に咲いて春に散ゆく 別れの美しさ。 そうして、 胸に宿った儚く呪いの様なもの。 瞑る瞼の裏に焼け付く、 いたいけなノスタルジー。 あの日誓った永遠は、 戻れない日々を想う事。 失って、気づいて、生きてく。