耳のすぐ傍、囁いた 「蜘蛛は蟲を喰らうから、 お前は手を汚すな」と――、 「朝蜘蛛殺すな」 花を愛でるは、 実を喰らうべく――、 腹を撫でては、仔を玩ぶ。 誰かが仕留めた獣を血肉に、 誰かが堕とした卵は孵る――。 産まれた時から身篭る我が蟲を、 裂いて、取り出す度胸も無いな ――と、肩を震わせ嗤うナイフに 番の餐叉を宛がって――、 嗚呼 朝、蜘蛛喰み そして、殺す――、 生きた血肉に、沈む轍を 嗚呼 朝、蜘蛛喰み そして、殺す――、 喉を這いずり、のたうつ鼓動を 嗚呼 「朝蜘蛛殺すな、 あれは蟲を喰らうから、」 私は、手を汚さない あれが蟲を喰らうなら 穢れた私の身体はもう――、