下北駅を降りて すぐ右へ行ったところに なんか狭い階段があって その下でホラ 釘バットがひとつ、 ぽつりと置き去りにしてあって 「こんちは」って声かけたら 「こんちは」って返ってきた あ、こいつ 喋るタイプのバットだな・・・ って思ったから とりあえず家に持ち帰るのさ これでしばらくは時間も つぶせるだろと 簡単に考えてしまったこと自体が 運の尽きさ 退屈な日々の中で僕は 何度もそう願っていたよ 案外平和な世界で少しの 何かが起こることを 傍若無人な過去に捕らわれて 動けない自分ですら 隠してしまえるようなこと どこかで期待したよ <♪> それから何かが 動き出したのは明らかだった 部屋に何者か、侵入の痕跡が・・・ あれだけ口数多かった この釘バットだって 最近じゃもう めっきり喋らなくなってしまった あ、こいつ 何か隠してるんだな・・・ って思ったから とりあえずゴミとして 捨てちゃおう 最低な日々の中で僕は 何度も話しかけたよ いざ手放す瞬間になると なんだか思い切れなくて 気づきゃバットを握りしめたまま 僕は走り出していたよ こうなりゃ何の組織だろうと なんでも逃げ切ってやる <♪> いち に さん し ご ろく なな はち に に さん し ご ろく せーのっ↑!! <♪> 彼女を追いつめたのは かつていじめっ子だったA子さん 見下した目でただ バットを寄越しなさい と言い放つ 折れそうになる心の中で 僕は何度も願っていたよ いつかコイツを殴り倒せる日が 訪れることを ふざけた感じの声で もういいよ とバットが言う そんな声も耳に届かず 僕はただ 息を整え 前を見据えてバットを握る 負けフラグを横目に 僕は叫ぶのさ 何度も願っているんだ