最近の宝物は形のないものばかりで 手ざわりのないまま面影を 慈しんでいる 心をひとつ電子回路にのせて 伝えたい それが恐ろしい 入り組んだ駅みたい 行き先に迷うたび、 ただしい機会はいつも 遠ざかっていく だれもがすばらしくてぼくはそう じゃないみたい 鏡の水垢のむこうにはまたかなしげ なあなた だれかと比べるほどに醜く 見えてしまう 与えられた形を赦すことが、 怖かった 想い出にならない日々を誰も 覚えてないでしょう そのなかにひとつ、 ひとつだけ宝物があった 痛いような言葉、視線、空気 しらないふりして それが分け隔てのない愛としても 裏表のある行為としても おさえられない呼吸や存在をただ 赦して だれかと比べるほどに醜く 見えてしまう 与えられた形を赦すことが、 怖かった また、 誰にとってもなんでもない毎日で 透き通る鉢を満たす光に出会いたい