母のマフラー 小田純平 小さな町の駅のホームで 我が子に夢を託した父 餞別がわりの手編みのマフラー 母の匂いがした 貧しさゆえの寂しさを 埋めるように働いて 誰にも言えない痛みに 人の温もり恋しくて 古びた家の明かりはもう灯らない 思わず涙あふれて あの日のマフラー 顔うずめれば・・・ 母の匂いがする ♪ 病の床で微笑みながら 「これでいいよ」と語った父 消えゆく記憶の中あの日のマフラー 母は忘れていた 手にしたものも多いけど 寂しさ消せぬ虚(むな)しさよ 誰にも言えない痛みに 人の温もり恋しくて 古びた家の明かりはもう灯らない 思わず涙あふれて あの日のマフラー 顔うずめれば・・・ 母の匂いがする ♪ 古びた家の桜は今も咲き誇り どんなに時がすぎても あの日のマフラー 顔うずめれば・・・ 母の匂いがする