桃太郎伝記 ~鬼火~ 作詞・作曲 浅葱 直し心 我が太刀に いざ宿れ 千早振(ちはやぶ)れば如何にぞや 泣きて 七日七夜(なぬかななや)の船路の 果てに 見及ばぬ島へ行き着きにけり 体(たい)を渡せ 腕(かいな)を渡せ 足を渡せ 眼(まなこ)を渡せ 鼻を渡せ 口を渡せ 耳を渡せ 肝を渡せ 腸(はらわた)を渡せ 顔を渡せ 五体五臓を渡せ 時は来たり 切岸(きりぎし)差し 登りてざざめく心 今今と待ち侘ぶる 鮮らけし生けらむ 血肉(けちにく) し垂るる生り物 一口喰らはば 肉叢(ししむら)得たり 逃さじ 怪異なる窟 入らむとする惣闇(つつやみ)は 漫(そぞ)ろ寒きに いかいかと哭き響(とよ)む 声あれど姿なし ゆくりかに寄り来たる鬼火は群立ち 押し掛く 直し心 我が太刀に いざ宿れ 千早振れば如何にぞや 泣きて 苦しげなる世 迷へる魂(たま)よ せめて眠(ねぶ)れ 和ぐやうに眠れ 焔纏ひ眼(まなこ)を見くるべかす ただ鬼の如く 己が隠ろへ 知らずしもあらじ 闇隠る鋭し角を 刃が血を啜ればこそ怪し 妖気帯びたり 我が脳(なづき)に移り行く 褻(け)晴れなく 気(け)懐かしき桃の花 咲くらむ 本意果たすまで思ひ励みて先へ勇め 輩(ともがら)と 直し心 我が太刀に いざ宿れ 千早振れば如何にぞや 泣きて 苦しげなる世 迷へる魂よ せめて眠れ 和ぐやうに眠れ