汗ばむ温度を風に乗せて この夏最後の花火を見るんだ 夕日の影が夜を連れた この夏最後のボクらの夢 不意の視線と黒い長髪を結わいた 浴衣姿と華奢な背中 黄昏時の向こう ぱーっと あの空に 花火が上がって 君が微笑んで その有り触れた日々が全てで それだけだった 夜空を着飾る光の粒に 遅れて音がする それが恋の終わりと知らずに 君に笑いかけていた 心がどこか漫ろなのは 下駄が擦れて痛むからだっけ 歩幅も何も合わないのは 人目を避けて歩いたから? 空っぽの手すら埋められない 意気地なしの最終列車 ラムネの呼吸に閉じこもる このビー玉みたいに あの海の向こう側よりも ずっとずっと遠い一歩 たとえどれだけ近づいても その願いはもう遠すぎる 花火が可憐に色付いてみせる その暗闇の深いところに 気づけなかった ふたりの隙間を照らす残り火 遅れて音がする 打ち上がっては賑わう人波 今日は8月の空 それが恋の終わりと知らずに 君に笑いかけていた あと少しの もう少しの 埋まらない距離と夏 届かない 触れない あの花火のように